「地面師とは何か?」
「地面師の手口や対策は?」
このような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
本記事では、地面師の実態や手口、実際にあった事件、そして対策方法について詳しく解説します。
不動産取引に関わる方々はもちろん、個人の方も参考にしてください。
地面師とは?
地面師とは、不動産詐欺を行う悪質な詐欺師のことを指します。
不動産のプロでさえ騙されてしまうこともある地面師の手口は、非常に巧妙で深刻な問題となっています。
ここでは、地面師とは何か、その手口や実態について詳しく解説します。
地面師とは、不動産詐欺を行う詐欺師のこと
具体的には、地面師は空き家や空き地など、所有者が住んでいない不動産を狙います。
そして、偽造書類を使って所有者になりすまし、買主から代金を騙し取ります。
買主が詐欺に気づくのは、法務局で登記申請が却下されたり、本当の所有者とトラブルになった後です。
この時点では既に地面師は姿をくらましており、被害金の回収は極めて困難になります。
地面師による被害額は数千万円から数十億円に及ぶこともあり、被害者の人生を狂わせてしまう深刻な問題となっています。
地面師の巧妙な手口
地面師の主な手口は、以下になります。
- 所有者へのなりすまし
- 偽造書類の使用
- 複数の仲介業者の介在
- 巧みな話術と心理操作
まず、偽造された登記簿謄本や印鑑証明書を使用して、不動産の正当な所有者になりすまします。
次に、複数の仲介業者を介在させることで、取引の信頼性を高めます。
さらに、架空の物件を売却対象として提示することもあります。
これらの手口は巧妙に組み合わされ、被害者が気づきにくい形で実行されます。
不動産取引の際は、これらの手口を把握して、慎重に対応することが重要です。
地面師による実際にあった事件
地面師による実際にあった事件は、以下です。
- 積水ハウス(2017年)
- アパホテル(2016年)
- 渋谷区富ヶ谷の土地(2021年)
それぞれの事件の詳細について紹介します。
積水ハウス(2017年)
2017年6月、大手住宅メーカーの積水ハウスが東京都品川区の土地を購入しようとした際、地面師グループに約55億円を騙し取られるという衝撃的な事件が起きました。
事件の舞台となったのは、東京都品川区西五反田にある「海喜館(うみきかん)」という元老舗旅館の土地でした。
積水ハウスは、この約2,000平方メートルの土地について、所有者と名乗る人物らと売買契約を締結しましたが、実際には偽の所有者だったのです。
積水ハウスは、4月に土地の購入交渉を始め、6月までに計63億円という巨額の支払いを完了しました。
しかし、法務局で土地の所有権移転手続きをしようとしたところ、所有者側から提出された書類が偽造されていたことが判明し、申請が却下されました。
積水ハウスが所有者側に連絡を取ろうとしましたが、すでに連絡が取れない状況になっていました。
そして、契約時に立ち会った女性が所有者になりすましていたという衝撃の事実が明らかになったのです。
アパホテル(2016年)
2016年にアパホテルが東京都港区赤坂の一等地で約12億6,000万円もの大金を騙し取られるという事件が起きました。
事件の舞台となったのは、外堀通りから六本木通りに抜ける裏道沿いにある約114坪の土地です。
この土地は、ホテル建設に適した立地条件を備えており、アパホテルにとって魅力的な物件だったのです。
地面師たちは、土地の所有者である年配の兄弟になりすまし、アパホテルと取引を進めました。
彼らは巧妙な手口で、アパホテルの担当者を信用させることに成功しました。
アパホテルは、なりすまし役を本物の所有者だと信じ込み、慎重な確認作業を怠ったまま取引を進めてしまいました。
その結果、約12億円もの大金を騙し取られる結果となったのです。
渋谷区富ヶ谷の土地(2021年)
この事件では、不動産会社の社長が約6億5000万円もの大金を騙し取られるという悲惨な結果となりました。
地面師グループが土地所有者になりすまし、不動産会社の社長に土地の売却話を持ちかけたのです。
彼らは巧妙な手口を使い、弁護士や弁護士事務所という信用性を利用して詐欺を行いました。
被害者となった不動産会社の社長は、この話を信じてしまいました。
なぜなら、土地の価格が相場よりも安く、転売で利益が見込めると考えたからです。
また、弁護士が関わっているという点も、信用度を高める要因となりました。
しかし、契約後に登記ができないことが判明し、詐欺であることが発覚しました。
被害者は「相手を信用してしまった一番の理由は地主の代理人が弁護士であり、交渉場所も弁護士事務所だったというところです」と語っています。
地面師に狙われやすい物件
地面師に狙われやすい物件の特徴は、以下の通りです。
- 更地や空き地の状態が長く続いている物件
- 所有者が高齢で、物件の管理が行き届いていない土地や建物
- 相続登記が未了で放置されている不動産
- 抵当権が設定されていない無借金の物件
それぞれの狙われやすい理由について解説していきます。
更地や空き地の状態が長く続いている物件
更地や空き地の状態が長く続いている物件は、地面師に狙われやすい危険性が高いです。
このような物件は、所有者の存在が不明確で、現地確認が難しいため、詐欺の標的になりやすいのです。
- 所有者が住んでいないため、第三者になりすましやすい
- 長期間放置されている物件は所有者の関心が薄い可能性がある
- 空き地のため、近隣住民や関係者からの情報が得にくい
- 相続未登記などで所有者が不明確な場合がある
これらの理由により、更地や空き地の状態が長く続いている物件は地面師にとって魅力的なターゲットとなります。
定期的な現地確認や、所有権の再確認、不動産登記情報の更新などの対策を講じることが重要です。
所有者が高齢で、物件の管理が行き届いていない土地や建物
所有者が高齢で、物件の管理が行き届いていない土地や建物は、地面師に狙われやすい危険な物件です。
- 高齢者は認知機能の低下により、不正な取引に気づきにくい
- 体力の衰えで、現地確認や管理が困難になる
- 相続問題で所有者が不明確になりやすい
まず、高齢の所有者は認知機能の低下や体力の衰えにより、不動産の管理が十分にできないことがあります。
また、相続問題や遠方への転居などで、所有者が物件から離れていることも多いです。
さらに、管理不足により空き家や荒れ地になっていると、近隣住民からの情報も得にくくなります。
このように、所有者や親族は、定期的な現地確認や不動産の適切な管理を心がけることが重要です。
相続登記が未了で放置されている不動産
相続が完了していない状態で放置されている不動産は、地面師に狙われやすい危険な物件です。
- 相続人が複数いる場合、真の所有者が不明確になる
- 相続登記が未了のため、亡くなった所有者名義のままになっている
- 相続人同士の連絡が取れていないケースが多い
相続人が複数いる場合、各相続人の権利関係や持分が不明確になりやすく、これが地面師の介入しやすくなります。
また、相続登記が未了のまま長期間経過すると、登記簿上の所有者と実際の権利者が一致しなくなり、地面師が悪用する可能性が高まります。
さらに、相続人同士の連絡不足は、不正な取引が行われても発見が遅れる原因となり、地面師にとって好都合な状況を生み出します。
これらの問題に対する対策としては、まず相続が発生したら速やかに相続登記を行うことが重要です。
相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を早期に行い、権利関係を明確にすることが求められます。
また、定期的に相続人同士で連絡を取り合い、不動産の管理状況を確認し合うことも効果的です。
抵当権が設定されていない無借金の物件
抵当権が設定されていない無借金の物件は、所有権の移転がスムーズなので、地面師にとって魅力的なターゲットとなります。
抵当権とは、債務の担保として不動産を設定し、債務不履行時に他の債権者に優先して弁済を受ける権利です。住宅ローンなどで一般的に利用され、所有者は担保物件を引き続き使用できるのが特徴です。債務が完済されるまで登記簿に記載が残り、完済後は抹消手続きが必要となります。
- 抵当権がないため、金融機関などによる確認が入りにくい
- 所有者に資金需要が低いと思われるため、急いだり不自然な取引が目立ちにくい
- 借金がない物件は、一般的に資産価値が高い
抵当権のない無借金物件は、第三者チェックの欠如や高い資産価値により地面師の標的になりやすいです。
対策としては、不動産取引の際は、専門家のアドバイスを求めることが大切です。
また、厳しい本人確認を行うことも重要です。
急ぐ取引や変わった条件には注意し、必要なら公的機関に確認することをおすすめします。
地面師に騙されないための対策
地面師による詐欺を防ぐための対策は、以下です。
- 複数の身分証明書を照合し、顔写真と本人を直接確認する
- 弁護士や司法書士など、専門家に契約書をチェックしてもらう
- 所有者と会えない場合や取引を急ぐ場合は注意する
それぞれの対策について、詳しく説明していきます。
複数の身分証明書を照合し、顔写真と本人を直接確認する
地面師による詐欺を防ぐためには、複数の身分証明書を照合し、顔写真と本人を直接確認することが効果的です。
なぜなら、一つの書類だけでは偽造や変造のリスクが高いためです。
例えば、運転免許証とパスポート、マイナンバーカードなど、異なる発行元の身分証を確認することで、情報の信憑性を確認できます。
また、顔写真と本人を直接確認することで、書類の所有者が本当に取引相手本人であるかを確認できます。
具体例として、不動産取引の際には、売主に対して運転免許証とパスポートの提示を求め、両方の書類に記載された情報が一致することを確認します。
さらに、その場で本人と対面し、身分証明書の顔写真と照らし合わせて本人確認を行います。
これにより、地面師が偽造書類を使用していても、発見しやすくなります。
弁護士や司法書士など、専門家に契約書をチェックしてもらう
弁護士や司法書士などの専門家に契約書をチェックしてもらうことも効果的です。
その理由は、法的な観点から契約内容を精査できるからです。
地面師は巧妙な手口で偽造書類を作成することがありますが、専門家は豊富な経験と知識を活かして、そうした不正を見抜ける可能性が高くなります。
具体例として、2017年に発生した積水ハウスの地面師詐欺事件があります。
この事件では、偽造された公正証書が使用されましたが、専門家による厳密なチェックがあれば、こうした偽造を見抜ける可能性があります。
専門家は、書類の信憑性や整合性を確認し、疑わしい点があれば追加の調査を行うことができます。
このように、弁護士や司法書士などの専門家に契約書をチェックしてもらうことは、地面師による詐欺を防ぐための重要な対策となります。
所有者と会えない場合や取引を急ぐ場合は注意する
所有者と直接会えないことや取引を急ぐことが危険な理由は、本人確認や細かい調査が困難になるからです。
地面師は、所有者になりすまして取引を進めたり、急ぐ必要性を強調して買主の判断力を鈍らせたりすることがあります。
また、十分な調査時間がないことで、偽造書類や不正な取引条件を見逃す可能性が高まります。
このように、所有者と会えない場合や取引を急ぐ場合は、地面師による詐欺のリスクが高まります。
そのため、このような状況では取引を一時中断し、専門家に相談することをおすすめします。
また、所有者と直接会うことを強く要求し、十分な調査時間を確保することが重要です。
地面師詐欺に関するよくある質問
地面師詐欺は個人でも被害に遭う可能性がありますか?
地面師詐欺は個人でも被害に遭う可能性があります。
大手企業だけでなく、個人も地面師の標的になることがあるため、注意が必要です。
個人は企業に比べて不動産取引の経験が少なく、詐欺の手口を見抜くのが難しいことがあります。
また、個人所有の不動産は相続や長期保有により権利関係が複雑になっていることがあり、地面師に付け込まれやすいです。
さらに、個人の方は専門的な法務チェックを受けずに取引を進めてしまうことがあります。
このように、地面師詐欺は個人でも十分に被害に遭う可能性があります。
特に相続した不動産や投資用不動産の所有者は注意が必要です。
地面師詐欺に遭った場合、どうすればいいですか?
地面師詐欺に遭った場合、まずは速やかに警察に被害届を出し、弁護士に相談することが重要です。
地面師は組織的に活動することが多く、時間が経つほど証拠の隠滅や犯人の逃亡のリスクが高まります。
また、早期に法的手続きを開始することで、不正に取得された不動産の権利を取り戻せる可能性が高くなります。
このように、地面師詐欺に遭った場合は、冷静かつ迅速な行動が求められます。
警察への被害届の提出と弁護士への相談に加えて、関係する金融機関や不動産業者にも連絡を取ることが大切です。
また、詐欺の手口や使用された偽造書類などの情報を可能な限り記録しておくことも、その後の対応に役立ちます。
地面師詐欺は、現在も増えていますか?
地面師詐欺は現在も増加傾向にあります。近年の不動産価格高騰に伴い、再び被害が拡大しているとされています。
不動産価格の上昇により、詐欺による利益が大きくなっています。
また、高齢化社会の進展に伴い、管理が行き届いていない不動産が増えていることも要因の一つです。
さらに、インターネットの普及により、不動産情報の取得や偽造書類の作成が容易になったことも影響しています。
このように、地面師詐欺は現在も増加傾向にあり、その手口はますます巧妙化しています。
不動産取引に関わる全ての人々が、この問題に対する認識を高め、適切な対策を講じることが重要です。
まとめ
地面師とは、他人の不動産を不正に売却して代金を騙し取る悪質な詐欺師です。
- 更地や空き地の状態が長く続いている物件
- 所有者が高齢で、物件の管理が行き届いていない土地や建物
- 相続登記が未了で放置されている不動産
- 抵当権が設定されていない無借金の物件
これらの物件は、所有者の存在が不明確であったり、管理が行き届いていなかったりするため、詐欺の標的になりやすいです。
地面師による詐欺を防ぐためには、複数の身分証明書を照合し本人確認を徹底すること、専門家に契約書をチェックしてもらうこと、所有者と直接会えない場合や取引を急ぐ場合は特に注意することが重要です。
地面師詐欺は現在も増加傾向にあり、その手口はますます巧妙化しています。
不動産取引を行う際は、本記事で紹介した対策を十分に実践し、慎重に進めることが大切です。
また、「不動産投資で騙されやすい人の特徴」や「注意すべき不動産業者の見分け方」について、より詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。