賃貸物件を借りる際に必要とされることが多い連帯保証人。
一般的に家族(親族)をたてることが求められますが、そもそも連帯保証人にはどのような役割があるのでしょうか。また、身内に頼めない場合はどうすればよいのでしょうか。
この記事では、連帯保証人が必要な理由、連帯保証人として認められるための条件、そして頼める人がいない場合の対処法について解説していきます。
連帯保証人の制度を理解して、スムーズに賃貸住宅の契約手続きを進めましょう。
連帯保証人制度とは
連帯保証人制度は、貸主(不動産会社など)が家賃を回収できなくなるリスクを減らすために存在しています。
たとえば、借主が家賃を滞納してしまったり、修繕費を支払えなかった場合は連帯保証人に支払い義務が生じます。このように、連帯保証人は借主と同じ責任を負える立場の人が望ましいため、親や兄弟など、家族に頼むことが一般的です。
賃貸借契約には連帯保証人が必要?
一部の賃貸物件を除いて、部屋を借りる際には基本的に連帯保証人が必要です。
先ほどお伝えしたように、借主が家賃や修繕費を支払えなかった場合は連帯保証人に支払い義務が生じます。
なお、連帯保証人が負う責任は金銭の支払いだけではありません。
たとえば、騒音問題で借主に注意しても解決しない、あるいは連絡がとれない場合は、管理会社や大家さんから連帯保証人へ借主に対して注意するよう連絡が入ることもあります。
通常の保証人との違い
通常の保証人には法的拘束力がなく、管理会社などから借主の代わりに支払いを求められても「滞納者本人に請求してください」と断ることができます。
しかし、連帯保証人の場合は断ることができません。
連帯保証人の責任は重く、借主とほぼ同等の立場で責任を負う必要があります。
そのため、賃貸契約においては「保証人」よりも法的拘束力がある「連帯保証人」をたてることが求められ、条件としてリスクを背負える親族に限定されているケースが多く見られます。
保証人 | 法的拘束力はない |
連帯保証人 | 法的拘束力があり、借主と同等の責任が生じる |
連帯保証人は家族以外でもなれる?
連帯保証人は借主の代理人としての責任があるほか、何かトラブルが起きた際の緊急連絡先にもなるため、対象者は借主に近しい二親等以内または三親等以内の親族に限られることが多いです。
ただし、安定した収入があり、連絡がスムーズに取れる相手であれば友人でも連帯保証人として認められるケースもあります。親族に頼むことが難しい場合は、一度不動産会社に相談してみるとよいでしょう。
連帯保証人は家族に頼むべき?
連帯保証人は責任が重いため、誰にでも頼めるわけではありません。
借主が家賃を払えない場合に代理で支払う必要があるので支払い能力や責任能力が必要です。
連帯保証人には主に以下の要件が求められます。
- 弁済責任を負える親族である
- 返済能力がある
- 保証の同意を得られる
契約者の親族
連帯保証人は責任が重く、未納分の家賃や退去時の修繕費用などを支払う義務があり借主と同等の責任を負う必要があるため、親族であることを契約で定めている場合が多いです。
連帯保証人として認められる親族の範囲については契約で個別に定められていますが、二親等以内もしくは三親等以内であることが一般的です。
三親等以内
先に述べたように、連帯保証人は二親等以内あるいは三親等以内の親族であることが条件になっているケースが多いです。
親等とは親族関係における対象者との血縁の距離を指しており、対象者から見て両親や子供は一親等、兄弟姉妹や祖父や孫は二親等です。
「三親等以内」の要件を満たす関係として、以下が挙げられます。
- 本人の親兄弟
- 親兄弟と夫婦関係にある人
- 祖父母や曾祖父母
- 曾孫や叔父叔母
- 甥や姪
- 子供や孫
なお、親等の関係性は以下の通りです。
親等 | 本人との続柄 |
---|---|
一親等 | ・両親・子供 |
二親等 | ・兄弟姉妹・祖父母・孫 |
三親等 | ・親兄弟と夫婦関係にある人・曾祖父母・曾孫や叔父叔母・甥や姪 |
三親等以内とは、一~三親等に該当する続柄すべてが連帯保証人の対象に含まれるという意味になります。
安定した収入がある
連帯保証人には、借主と同様に家賃などの支払い義務があります。
そのため、無職の方や年金受給者など、収入が安定しない方は連帯保証人を断られる可能性が高いです。
ただし、「年金額が多い」「不動産などの別所得がある」場合は問題ないケースもあるので、不動産会社に問い合わせてみると良いでしょう。
本人証明・年収証明ができる
連帯保証人には本人確認書類の提出のほか、収入証明を求められることがあります。
年収証明ができる書類としては、本人の源泉徴収票や確定申告書が有効です。
本人確認書類 | ・健康保険証・運転免許証・マイナンバーカード など |
年収証明書類 | ・給与支払明細書・源泉徴収票・確定申告書 など |
連帯保証人が見つからない時の対策
連帯保証人をたてたくても家族に頼めなかったり、三親等以内に該当する親族が見つからないケースもあるでしょう。
その場合は、以下の対処法を参考にしてみてください。
- 連帯保証人が不要な物件を探す
- 代行業者(家賃保証会社)に依頼する
連帯保証人が不要な物件を探す
賃貸物件によっては、連帯保証人をつけずに契約可能なケースがあります。
特に、空室期間が長い物件や入居希望者が少ない物件などは連帯保証人を設定していない場合があります。
また、「定期借家契約」は連帯保証人が不要になっていることがあるので、そちらを探すのも良いでしょう。(※定期借家契約とは、同じ物件に住める期間が定められている契約のこと)
定期借家契約では、契約期間があらかじめ定められているため、家賃の支払いなどでトラブルがあった場合に再契約してもらえない可能性があります。
なお、通常の契約は「普通借家契約」と呼ばれるもので、契約期間満了後も借主の希望で再更新できます。
契約の種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
普通借家契約 | ・入居者の希望で契約更新できる | ・連帯保証人の設定が必要 |
定期借家契約 | ・連帯保証人が不要な場合がある | ・大家さんの合意がなければ契約更新できない場合がある |
家賃をクレジット払いにすることで、連帯保証人を不要とする物件もあります。これは、大家さんもしくは不動産管理会社がクレジットカード会社と提携し、第三者機関から家賃保証を受けることで連帯保証人の代わりにする仕組みです。
ただし、この方法を利用する場合はクレジットカード会社の審査に受かる必要がある点と、クレジット払いにしていても連帯保証人を求められるケースがある点を理解しておきましょう。
代行業者(家賃保証会社)に依頼する
家賃保証会社は、借主が家賃などを滞納した際に代理で支払いをしてくれる会社です。
家賃保証会社に加入することで連帯保証人が不要になる物件もありますが、保証料として一定の金額を支払う必要があります。
家賃保証会社について
家賃保証会社は連帯保証に近い役割を果たす機関で、利用することで大家さんは部屋を貸しやすくなる、借主連帯保証人を用意しなくても良いなど、双方にとってメリットがあります。
なお、国土交通省の統計によると、賃貸借契約の97%において貸主は何らかの保証を求めていて、そのうち、約6割が家賃保証会社を利用しています。
連帯保証人の有無に関わらず、賃貸借契約時には家賃保証会社を利用するケースが般的ということです。
○賃貸借契約の約97%において、何らかの保証を求めており、約6割が家賃債務保証会社を利用。
国土交通省「家賃債務保証の現状」
家賃保証会社の保証料
家賃保証会社を使うためには所定の保証料を支払う必要があります。
国土交通省の調査によると、家賃保証会社の保証料の相場は紹介時に家賃の50%、以後1年ごとに1万円を設定している事業者が多いようです。
○契約時の保証料は、初回時月額賃料の50%、以後一年毎に1万円と設定している事業者が多い。
国土交通省「家賃債務保証の現状」
家賃保証会社を利用する流れ
家賃保証会社を利用する際は以下の流れで手続きを進めます。
- 審査を受ける
- 賃貸借契約の締結
- 家賃債務保証委託契約の締結
- 保証料の支払い
家賃保証会社を利用する場合、借主(A)と不動産会社(B)および家賃保証会社(C)の三社間での契約となります。
審査を受ける
借りたい物件が決まったら、まずは入居申し込みをして入居審査の結果を待ちます。
入居審査でチェックされる点は、支払い能力の有無、トラブルを起こす危険性がないか、連帯保証人になっている人物は適任者か(支払い能力・借主との続柄)などです。
大家さん、管理会社、家賃保証会社がそれぞれ審査をするため、結果が分かるまでに通常2~3日程度かかります。定休日をはさんだり、連帯保証人をつけない場合は家賃保証会社の審査に時間を要する可能性があるので、1週間ほどかかるケースもあると認識しておきましょう。
国土交通省の統計によると、家賃保証会社の審査では高齢者や生活保護受給者が通りにくい傾向にあるとされています。
○民間会社の家賃債務保証の審査状況を見ると、年齢別では、高齢者が通りにくく、属性別では、生活保護受給者や外国人等が通りにくい傾向。
引用:国土交通省「家賃債務保証会社の審査状況」
賃貸借契約の締結
入居審査を通ったら、賃貸借契約書の締結に進みます。
連帯保証人が必要な場合は、賃貸借契約書に本人の署名・捺印をもらってから不動産会社へ提出しましょう。
連帯保証人をつけず家賃保証会社を利用する場合は、契約書へその旨を記入するか、すでに不動産会社のほうで記載しているはずです。
なお、家賃保証会社とはまた別に委託契約を結ぶ必要がありますが、不動産会社が代理店になっていることが多いため、大抵は賃貸借契約と同時進行で加入手続きも行う流れになります。
家賃債務保証委託契約の締結
家賃保証会社と家賃債務保証委託契約の締結をします。
家賃債務保証委託契約書には保証対象や保証期間、保証料などについて記載されているのでしっかり確認してからサインしましょう。
保証料の支払い
保証料は入居時に初期費用を支払うほか、毎年1年ごとに保証料を支払うケースが多いです。
一般的な保証料の相場は家賃の50%、あるいは1万円となっています。
家賃を滞納した場合の手続き
家賃を滞納してしまった場合、連帯保証人または家賃保証会社が貸主へ弁済を行います。
連帯保証人(家賃保証会社)がオーナーへ支払い
家賃を滞納すると、連帯保証人あるいは家賃保証会社に連絡が入ります。
連帯保証人が借主の代わりに家賃を支払った場合は、その金額を借主に対して請求することが可能で(=求償権)、借主と連帯保証人の弁済については当事者間で話し合いを行うケースが一般的です。
入居者が家賃保証会社へ弁済する
家賃保証会社が滞納分を立て替えた場合は、後日、借主に支払いを求める連絡が入ります。
そして、借主は家賃保証会社に対して【立て替えてもらった金額+遅延損害金】を支払うのが一般的な流れです。
家賃を支払わないとどうなる?
家賃を支払わずにいると、家賃保証会社から電話や手紙で督促連絡が入ります。
連絡を無視し続けると、内容証明郵便で契約解除の予告をされます。その後も対応しないで放置したり、何ヵ月分も家賃を滞納すると契約解除となり退去せざるを得ない状況になるでしょう。
また、家賃を滞納していると滞納者の信用情報に傷がつき、ローンを組めなくなる可能性があるので注意をしてください。
連帯保証人の場合は問題ないですが、家賃保証会社から未納情報が信用情報機関に上がるといわゆるブラックリストに登録される可能性があります。
連帯保証人制度を上手く活用しよう
家賃を支払えないと、不動産会社だけでなく連帯保証人や家賃保証会社にも迷惑がかかってしまいます。個人の信用情報も傷ついてしまうため、保証人がいるとしても必ず期日通りに家賃を支払うようにしてください。
もし、連帯保証人を設定することが難しい場合は、連帯保証人が不要の物件を探す、家賃保証会社を利用するなどの方法で対処しましょう。
なお、福岡でお部屋を探す際は、住み心地の良い物件を多数取り揃えているえんホールディングスグループへぜひご相談ください。